九州・沖縄地区研究会運営担当の分科会2に参加した。
テーマは「どう変わる大学職員、どうやって変えるーそのための学びと実践」である。
今回の研修集会のメインテーマである「あらためて問われる職員力〜私たちに求められる☆☆☆」を踏まえ、大学を変える原動力として職員はどう変わるべきか、そのために何をどう学ぶか、学ばせるか、ということについて個人と組織の両方の視点から考えたい。
(「第21回 定期総会・研究集会 資料集」より)
- 学外の人たちの出会いで学ぶ。
- 仕事を守るな。絶対に仕事のやり方は変わる。
- SDの義務化は、大学運営に職員がかかわっていくことが目的。
- 管理職の役割が重要。
- 個々人のニーズに応えられる制度を。
などなど、刺激的な意見が多く出された分科会だった。
いま、大学職員はどう変わるべきか、どう学ぶべきかを自問自答する材料にしていただければ幸いである。
なお、当日の資料集はこちらで頒布(有料)されている。
このページの目次
分科会2「どう変わる大学職員、どうやって変えるーそのための学びと実践」運営担当:九州・沖縄地区研究会
■ところ:西南学院大学
■発題者
西村 望氏(学校法人桜美林学園 総務部長)
西川幸穂氏(学校法人立命館 常務理事(総務担当))
松井寿貢氏(学校法人石田学園 広島経済大学 常務理事・事務局長)
山﨑その氏(京都外国語大学 総合企画室次長)
■進行
西 直美氏(熊本学園大学 事務局長)
進行の西氏から、キーワードは「学び」との説明があった。
そして発題者から、各15分の発表があった。
発表
志村 望氏
- ひどいと思ったことは、新人が1年もたたないうちに目がトロ〜ンとなる、はびこる前例主義、前任者がいなくて自分がやるしかなかった、など。
- 他大学の人たちや、キャリアセンターでの企業人との出会いで学んだ。
- 仕組みが人を育てるのか?大学だけがなぜSDが義務化されるのか?企業にはない。
- 大事なこと
・なぜ我々は大学職員なのか?
・何に喜びを感じるか?
・単なる事務員ではない。
・学生の人格と出会うことに喜びを感じる。
西川幸穂氏
職員の人材育成ー人事部での経験からー
- 学生に求めること、求めないこと
→求めないことはしない。 - いちばん大事なのは「職場」
→学びの確認はOJTで。 - (部下や同僚が)研修から帰ってきたら「どうだった?」と声をかける。
→学びが深まる。 - 仕事を守るな!
→絶対に仕事、仕事のやり方は変わる。 - 個人が輝くことにより、組織が輝く時代。
松井寿貢氏
- 新人向け研修などなかった。
- 学びは必要
→学びがあって、色々なことができた。 - SD義務化
→大学運営に職員がかかわっていくことが目的。 - 上司がポイント。
- 全体の底上げを優先。
山﨑その氏
- 「考えるのが苦手」というのは、考える方法を知らない・下手なだけ。トレーニングして鍛えればいい。
- 基本的な能力を身につけることが実務に役立つ。
- 職場では、毎朝ディスカッション(半時間から1時間程度)を行っている。
- 求められているのは、職員という枠にとらわれない成長志向と学生、大学全体、社会に対する貢献意識を持っている職員。
- 環境を作ってあげる。一人ひとりを把握する。一律の研修はダメ。
- 組織の仕組み、制度の改変は不可欠。個々人のニーズに応えられる制度を。
意見交換・質疑応答
- 人材育成は管理職の問題。
- 悪しき伝統がまだ残っている。生ぬるいところにはいたくないと感じる職員が。
- 環境が変わり、職員の意識も変わった。
- 自分を相対化することで力をつけていく。
- きっかけを作るために制度化は必要。
- (部下の)外での学びを上司は長い目で見る。大きい心でサポートする。
- 人材育成もタコツボ化してはいけない。
- すべてのプロセス、経験することが学び。
- 食いついてくる意欲が欲しい。
- 仕組みだけではダメ。
- 若い人ー差別はしないが区別はしている。
- 学びは内容も方法も「学び」。
- 仕組みを変えるのは管理職。
- サービス精神が職員には必要。
- 人事担当の役割は、人を育てられる人を育てること。
- 部下に任せる。部下が楽しむと上司も楽しい。達成感は自分がやったからといって得られるものではない。
- 「学生と共に」という意識を持ってほしい。
- 若い人は経験が足りない。コンテンツを教える必要がある。
- 方向性を示してやるのが管理職の仕事。仕組みづくり。一歩踏み出すこと。
- キャリアシートをもとに上司と相談。可視化することが大事。
- 多様性は大事。
- 至れり尽くせりの環境はダメ。きっかけ作りは組織だが、自分でやらないといけない。
- OJTとは「お前が、自分で、トレーニング」の意味。
- チャレンジできる仕組みを。
- 一歩踏み出そうとする人へ。合理的な素直さを持ってほしい。
- 思うようにならない部下をどうするか?武将に喩えると?
信長「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」
秀吉「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」
家康「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」
(筆者注)ちなみに質問者は、秀吉タイプでなければならないと思う、とおっしゃっていた。
さて、あなたのタイプは?
一句どうぞ。
感想
「昔は研修などなかった」という意見が複数あった。組織の体をなしていなかった大学が多かったと思わざるを得ない。
一方で、そういった時代では、大学職員は「事務屋」としての存在でしかなかったのであろう。現在でも同じような状態の大学があるのかもしれない。
とは言え、接遇や社会人としての心構え等を中心とした新人研修、大学団体等による階層別・職種別の研修、学内での課内研修等々はたしかに行われてきた。
だが、教員・職員が大学運営に必要な能力を身につけるための組織的な取り組みは、行われてこなかった大学が大半であろう。
本分科会で出された意見を聞いて、組織の人材育成ビジョンが重要だと強く感じた。
人材育成のビジョン、キャリアプランの提示とその可視化。PDCAを回し、より良いものにしていく作業。
「学ぶ」組織風土が、自ら学ぶ職員を増やしていく可能性。
同時に、人材育成ビジョンの、
- 非正規職員
- 大学運営に携わる教員
への対応という課題もある。
さらに、人生100年時代の働き方についても意識した人材育成策が望まれる時代になっている。
このように考えれば、大学執行部や人事担当部署の責任は大きい。そしてそれは、SD◯☓委員会に丸投げできるような問題ではない。
SDの義務化は、大学運営に職員がかかわっていくことが目的である。
そのために、教員に信頼される力量・見識を身につけること。このことに尽きるのではないかと感じたイベントだった。
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