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はじめに
大学行政管理学会の特別シンポジウム(第3回近畿地区研究会)に参加してきた。
テーマは「2040年代における大学の役割と使命ーそのために今、為すべきことー」。
今回は、第2部の吉武博通氏と村田 治氏とによる対談である。
対談の全容ではなく、筆者が重要だと感じたことをご紹介している。予めご承知いただきたい。
■と き:2018年12月9日(日)13:00-17:35
■ところ:龍谷大学深草キャンパス
【第1部】2040年代における大学の役割と使命 大学行政管理学会(JUAM) 特別シンポジウム(1)
▼当日の概要についてはこちら。
第2部 対談 吉武博通氏×村田 治氏

対談者
吉武博通氏(首都大学東京 理事・学長特任補佐)
村田 治氏(関西学院大学 学長)
吉武:「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では、多様性、流動性、柔軟性が強調されている。何度も読んで周りの人たちと議論してほしい。中教審の答申は毎回同じことばかり言っているが、変わっていない部分は、なぜ変わらないのか、変えられないのか、ということを考えるべき。答申は「一般解」で、各大学は「個別解」をどう導いていくか。反面、地方大学をはじめとして大学は白けている。
村田:大学は疲弊している。改革をしないと補助金が取れない。質保証についていうと、教員は研究優先で、多忙でもある。大学の幹部と一般の教職員との間に乖離が大きい。大学はトップダウンでもありボトムアップでもある組織。
吉武:潮木守一氏が述べておられるように、フンボルト理念は、最後の責任は国が取るという意味。学部長のマネジメント能力をどう高めるか?学部の運用を支えるのは職員だが、その必要性は?
村田:学部の自治をどこまで認めるのか?大学のガバナンスをどう考えるか?学部長の選び方をどうするのか?その資質を問うことまで大学に余裕がない。大学の行政全部を分かった上で学部長にならないといけない。本学では学部長補佐が5名いて、次の学部長を育てている。
吉武:学位のプログラム化について。
村田:STEMからSTEAMになっており、「A」は「ART」の意味。学部を基本にしながら、その中にコースを作る。学位プログラムを柔軟な形にする。
STEM教育:Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)
STEAM教育:Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)に、 Art(芸術)を加えた教育手法。
吉武:企業との連携で、大学教職員にその能力はあるか?
村田:私立大学の職員の能力は高い。競争状況が人を育てる。競争で負けた人間を退場させるのか?身分を保証した上で競争させないといけない。本学ではURAを採用したいと思っている。
吉武:教育の費用負担について。
村田:高度成長期には初等・中等教育に力を入れてきたが、それは過去のモデル。今後は高等教育に力を入れないといけない。
感想
第1部の村田氏の講演内容を踏まえて、吉武氏が村田氏にインタビューするというスタイルで進められた。
村田氏が、大学のガバナンス、学部自治、学部長の選出方法等々について、大学トップとしての苦渋を吐露されているのが印象的であった。
その一例が「幹部と一般教職員との乖離」ということかもしれない。
『カレッジマネジメント』誌で健筆をふるっておられる吉武氏の進行手腕はさすがというものだった。
SDの研修活動に頭を悩ませている大学は、吉武氏を講師に招聘されるがよい。
その折に、質問や悩みを率直にぶつけてみれば、同氏はきっと親身になって相談に乗ってくださるに違いない。
なぜなら吉武氏は、職員の理解者であり、また応援者でもあると思うからである。
短時間ではあったが、意義深い対談だった。
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