『未来形の大学』市川昭午著(玉川大学出版部)は名著である。
現在大学人が直面している問題について、数多くの示唆を与えてくれる。
本書は全5章からなるが、すこしづつご紹介する。
今回はⅠ章の「大学とは何か」である。
このページの目次
Ⅰ章 大学とは何か―機能の多様化と理念の喪失
1.組織の増殖と理念の消滅
大学は死んだ
- 大学は死んだ=大学の理念が失われてしまった。
- 大学は増殖を続けているが、数が増え、内容が多様化すればするほど、何が大学なのかがわかりにくくなっている。
- 大学のアイデンティティを求める選択肢は2つ
①学問共同体というフンボルト理念への回帰
→現実適合性を有しない。
②「エクセレント」という空虚な尺度と企業体的なアイデンティティを受け入れ、大学はより生産的で効率的たるべしというテクノロジー的要求に従う。
→事実上、大学の解体を承認するもの。
- 理念をもたない大学は死んだも同然。
- 「大学の本質」は何なのかを明らかにすることが求められる。
大学は定義できるか
- 「大学とは何か」に関する明確な定義は容易にみいだせない。
事(辞)典にも定義がない
- 時代と地域を超えた大学の概念規定はどこにもみいだせない。
- 大学について明確な定義が存在しないのは、大学というものが国により時代によってあまりに多様であるために、一口で規定しがたいため。
2.大学の本質
「中世大学の伝統」は皮相的
- 見解が一致することは、今日の大学が中世ヨーロッパに始まるとしている点。
- しかし、それは必ずしも納得できる形で示されていない。
- 中世の大学、近世の大学、近代の大学と現代の大学とでは、等しく大学と称していても、その内実は大きく異なる。
- 大学を中世以降のものとする見解は、大学の本質を曖昧にする役割を果たしてきた。
高等教育・中等後教育・第三段階教育
- 「第三段階教育」という用語は、最近の流れに沿っている。
- この定義の狙いは、機関を特定するよりも学習の水準や連続性を強調する点にある。
近代大学の理念
- 戦後の学制改革にあたって、わが国の大学関係者が求め続けた「本当の大学」は、近代大学の理念を具現すること。
- 近代大学の理念というのは、18世紀末から19世紀初めのヨーロッパで形成された。
- 近代の大学を特徴づけるのは、大学に内在する普遍的統合原理。
- 理念が現実に完全な形で達成されることはなかったが、全世界の大学関係者があるべき大学のイメージとして近代大学の理念を長期にわたって抱き続けてきた。
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- 作者:市川 昭午
- 出版社:玉川大学出版部
- 発売日: 2001-04-20
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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