井原 徹:私立大学の人事・労務・財務|『大学マネジメント論』から

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『大学マネジメント論』(放送大学教育振興会)は、放送大学の教材であるだけに、充実した内容である。

今回は、第8章 私立大学の人事・労務・財務―私立大学における「戦略的経営の実践のために」(井原 徹氏)の、2.私立大学における「人事」からのご紹介である。

井原氏はここで、

  • 「私立大学の特性を活かした人事・労務・財務」とはどういうものか。
  • 「私立大学経営のなかでそれらをどう活かしていったら良いか」

について、

  • 業務管理
  • ポジション制度

を踏まえた上での人材育成が必須であると述べている。

それではご紹介しよう。

私立大学経営における「人事」

  • 「業務管理」「ポジション制度」を踏まえた上での「人材育成」について。
  • 人材育成の目的は、「適切な配置転換により、職務の経験を豊かにさせるとともに、責任と権限の幅と重みを体得させること」であり、「組織目的や政策の効果的な実施者を確保すること」。

業務管理

  • そのためには「業務管理」が必須条件。
  • 場当たり的な配置転換、責任・権限の曖昧な職務環境では人材は育たない。
  • 「業務管理」とは、目指す大学を実現させるためには、大学にどのような仕事が新たに必要であり、その仕事をどのような方法でどういう能力を持った人材に遂行させたらよいかを分析し、業務として設定し、管理すること。
  • 前例、慣行にしたがった業務展開を戒め、働く者を後押しする業務管理を展開していかなければならない。
  • 今後は「業務・組織管理」のための専門部門の設置が望まれる。

ポジション制

  • 業務の適正配分においては、役職でない職員の責任と権限を明確にするとともに、業務の専門性を高める施策を実施し、21世紀の「個の時代」に合った制度設計を行うべき。
  • そのための基盤となるのは「ポジション制」。
  • ポジション制とは一人一人が1つのポジション(職位)について、責任を果たしていく仕組み。
  • 各ポジションの説明
    Job Summary(職務概要)
    Job Accountabilities(職務権限・責任概要)
    Job Qualifications(職務要件―経験年数・学歴等)
  • 全てのポジションは責務の難易度に応じて等級(Grade)に分類され、タイトル(職位名称)が付いている。
  • 大多数の大学では、部や課の組織ごとの「事務分掌規定」はあっても、そこに所属する職員の個人ごとに、ポジションを説明する上記の3つの管理はなされていないのが現状。
  • 誰々はこういう仕事をするという大雑把なことは「分担表」で決まってはいても、個々人の職務範囲、責任・権限を明示することはない。
  • こうした状況のなかで、優秀な人材を計画的に育成するとしたら、それは奇跡を待つようなもの。
  • 責任と権限を適切に理解・行使してもらい、職務経験を積み上げてもらう以外「人材を育成する」ことはできないと言っても過言ではない。
  • 組織全体の(大学)のミッション達成のための全ての経営機能や業務を確認し、個人の業務範囲を明らかにし、業務遂行に必要な責任・権限を与え、業務遂行に必要となる能力・技術・経験をはっきりさせ、それを働く者に求める。
  • そして、ポジション(職務)を有機的、合理的に集合させたのが各部・各課であるという、現状とは逆の発想で組織がつくられ、人がそこにいるという形を、可能な限り追求していく必要がある。
  • 人員増を容易にできないわが国の私立大学においては、アメリカ合衆国と比較すると、どうしても一人三役位をこなさなければならない。
  • したがって、一人一人をマルチプロフェッショナルに育成する必要性がでてくる。そのためには、配置転換(ジョブローテーション)を計画的に行うことが組織内人材育成においては必須。
  • 人材育成とは、観念的なものではなく、職務経験を通じた具体的なマルチプロフェッショナル、またはアドミニストレーターへの押し上げ。

まとめ

この問題は、すでに議論し尽くされており、現在ではより高いフェーズの議論になっているのかもしれない。

したがって、浅学非才の独り言になる可能性もあるが、それでも以下のことは述べておきたい。

業務管理とポジション制は、大学だけでなく企業においても、人事の根幹にかかわる課題ではないだろうか。

わが国の生産性が、先進国に比して極端に低いことは周知の事実である。

その原因の多くの部分が、このことではないかと個人的には考えている。

「ポジション」(責任と権限)が明確でない状態で、「目標管理制度」などが機能するわけがない。

そう思わざるを得ないのである。

「職務経験」を通じた具体的なマルチプロフェッショナル、アドミニストレーターへの押し上げという人材育成が実現されたとき。

そこでは、客観的で公平・公正な、そして「病む」ことの少ない職場が実現しているのではないだろうか。

最後になったが、このようなスキル表もある。

ご存知の方も多いとは思うが、参考にしていただければ幸いである。

大学マネジメント論 (放送大学教材)

大学マネジメント論 (放送大学教材)

  • 作者:山本 眞一,田中 義郎
  • 出版社:放送大学教育振興会
  • 発売日: 2014-03
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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