『未来形の大学』市川昭午著(玉川大学出版部)は名著である。
現在大学人が直面している問題について、数多くの示唆を与えてくれる。
本書は全5章からなるが、すこしづつご紹介する。
今回はⅠ章の「大学とは何か」②である。
Ⅰ章 大学とは何か―機能の多様化と理念の喪失
3.法令上の規定
学校教育法の目的規定と実態
- 「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く学芸を教授研究し、知的、道徳的および応用的能力を展開させることを目的とする(学校教育法52条)。
- この目的規定と今日の大学の実態との乖離はあまりにも甚だしい。
現行法規が期待する大学の役割
- 学校教育法上の目的規定は現行法制の範囲内で「あるべき大学」の性格を明らかにするうえで有用。
機能分担と機能不全
- 組織分担による対応が曲がりなりにも機能していた間は、大学の課題は、教育・研究の水準を引き上げ、学内の統合強化に努めることによって、名前だけの大学を少しでも「本当の大学」に近づけることであった。大学の理念は、努力目標としては存在しつづけてきた。
- 大学の大衆化が急ピッチで進行し、本来一元的な理念、単一の目的とサービスの対象を有する教員と学生の共同体を意味したユニバーシティが、目的もサービスの対象も多様なら権力の中心もさまざまなマルティバーシティへと変わってしまった。その結果、各部署が分担する役割さえ円滑に機能しなくなってきた。
- もはや大学全体のあり方を検討するところまではとても頭が回らなくなってしまう。
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- 作者:市川 昭午
- 出版社:玉川大学出版部
- 発売日: 2001-04-20
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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