文系学部のプロフィールー「IDE現代の高等教育」No.575 特集:文系の危機を読む(12)【最終回】

「IDE現代の高等教育」No.575

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「IDE現代の高等教育」No.575を読む。第12回目です。

最終回の今回は「文系学部のプロフィール」両角亜希子氏(東京大学 准教授/高等教育論)です。

筆者なりにまとめた内容です。

では、ご紹介しましょう。

文系学部のプロフィール

学部の種類の多様化

  • 1991年から2013年にかけて、在学者数は1.2倍に増えたが、大学数は1.5倍、全大学の学部数は1.7倍に増加した。
  • この間、学部の種類もきわめて多様化してきた。
  • 独自名称をもつ学部の数は、1991年は47学部であったが、2013年には317学部にまで増加している。
  • これには2つの政策が影響を与えている。
    ①大学の個性化・多様化を促すために1991年に大学設置基準が大綱化されたこと
    ②2004年度開設の学部から既存の組織と同じ分野であれば届出制で新しい組織が設置できるようになったこと

文系学部の変化

  • 学校基本調査から学生数の分布をみると、2014年では人文15%、社会33%、教育7%、学際系7%で、合計62%となる。これは1991年とそれほど大きく変わっていない。ただ社会科学系が減少して、学際系が増加した。

【設置者別の傾向:国立大学】

  • この23年間で、国立大学全体の学生数は、44〜45万人の間で、それほど変化していないが、国立大学の文系は、17,000名ほど既に減少している。
  • 教育系は1991年から継続的に減少傾向であるのに対し、社会科学系は2004年までは増加して、その後に減少に転じている。その代わりに2004年以降に増えたのが、学際系

【設置者別の傾向:公立大学】

  • 1991年に39校であったが、その後増加して、2015年現在は89校に増加した。
  • 学生数も58,096名から128,878名へと2倍以上に増加しており、文系のどの分野でも学生数は増加傾向にある。

【設置者別の傾向:私立大学】

  • 1991年に378校であったが、2015年現在、604校にまで増加した。
  • 学生数は、約160万人から約200万人にまで増加した。特に増えたのは、学際系117,191名、次いで教育68,547名、人文44,918名。社会科学は9,028名と最も増分が少ない。

【男女別に見た傾向】

  • 最も特徴が出たのは社会科学で、男子は134,648名減少したが、その分、女子は152,952も増加した。
  • 男女ともに大きく増加したのは学際系でそれぞれ7万名ほど増えた。

【就職先への影響】

  • この20年ほどで社会経済構造は大きく変化したが、どの学部を出ても就職先に大差のない状況は、それほど変わらなかった。
  • 巷間の文系教育の批判にあるように、分野別の教育の特徴がないことを問題点としてみるか、あるいは専門分野の学習を通じて汎用性のある能力を身につけさせている、とみるかはさらなる議論が必要

都道府県別の検討

  • 県別に見た文系割合の違いがきわめて大きい。
  • 文系割合が高い県や私立割合が高い県で、大学進学者の他県への流出率が低い傾向がある。
  • 徳島や栃木のような例外もあり、必ずしも私学割合だけが重要な要因ではない。
  • 地方における文系教育は私立大学の役割が大きいが、国立大学の役割も同時に重要。
  • 平成28年度には計13県で国立大学の文系の入学定員減が計画されているが、このうち9県で県外流出率が7割以上と、流出率が高い。つまり、もともと県外進学の多いところで、国立大学の文系学部を減らす傾向にある。
  • こうした地域は、私学割合も低く、当然公立セクターもあるが、国立の果たしている役割が大きい傾向にある。そのため、この趨勢が続けば、こうした地域で、さらに県外流出が増える可能性も高く、地方創生といった政策とも矛盾する変化が生じるかもしれない。
  • 文系分野の維持・発展においても地方ほど国立大学が担うべき役割は大きい。学際的な領域ももちろん重要ではあるが、そうした機能は損なわないような政策的配慮も必要ではないだろうか。

感想

重要だと思った指摘は、以下の3点。

  1. 学際系が増えたことが、文系学部の大きな変化。
  2. どの文系学部を出ても就職先に大差はない。
  3. 県外進学の高い地域の国立大学の文系を減らすと、さらに県外流出が増える可能性が高くなり、政策的配慮の必要がある。

一方で、

  • 優秀な生徒は地元の国立大学理系へ
  • そうでない生徒は専門職業大学へ

というシナリオがあるそうだが、はたしてどうなるのだろうか。

 

⇒第11回:企業からみた文系学部 永里善彦を読む。

【目次】文系の危機―「IDE現代の高等教育」No.575 2015年11月号を読む

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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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「IDE現代の高等教育」No.575