■2015年度 大学行政管理学会 第19回定期総会・研究集会
■2015年9月5日(土)〜9月6日(日)
■関西大学・千里山キャンパス
今回も、2日目午後の研究・事例研究発表のご紹介です。
このページの目次
Ⅳ―2 成績評価データを教育の質保証に活用する
橋本智也氏(京都光華女子大学EM・IR部)
発表の要約
「第19回定期総会・研究集会資料集」所収資料を中心にまとめました。
1.問題と目的
- 質保証制度の整備が多くの国の高等教育政策における優先事項の1つ
- 適切な成績評価を教員間の議論・活動につなげる仕組みを構築することが目的
2.方法・結果
①全科目を対象とした集計
- 教員ごとに成績評価値の分布図を作成
- 学内のFD関連委員会で報告
- 学科内・学科間における成績評価の分布状況について確認を依頼
②重要科目を対象にした集計
- 各学科に対し、教育目標に照らした重要科目の選定を依頼
- それらの科目について、①と同様の分布図を作成
- 各学科は、その分布図を用いて、成績評価の基準が適切か、また基準に沿った成績評価が行われているかを検討し、FD関連委員会で報告
- 報告内容を意思決定会議(学長、専務理事等)で報告
3.考察
◯全科目を対象とした集計
- まず教員間の議論・活動を進める入り口として
- 学内の成績評価の大まかな状況把握と、他の教員が担当する科目の教育目標、評価基準への議論を喚起することが可能に
◯重要科目を対象とした集計(今後の取り組み予定)
- 学科が重要科目を選定し、評価基準と成績評価の状況が適切であるかを検討することを通して、各学科の教育目標と提供科目の関係性と、実際の科目の運用を再確認することが可能に
◯学内に必ず存在する成績評価データだけを用いていることから、多くの大学で応用が可能
感想
橋本氏といえばIRです。「私立大学職員によるInstitutional Research(IR)文献メモ」というサイトを開設されていますので、ご存じない方は是非ご覧ください。
同サイトによれば、平成27年度の科学研究費補助金(奨励研究)に採択されたそうです。「データに基づく大学生の中途退学防止策(IR)のモデル構築:日米の制度差に着目して」という興味深い研究課題名です。大学院進学もいいですけど、ハードルは高くなりますが、科研費の獲得も自己啓発の選択肢のひとつですね。
さて、研究発表です。
シンプルで、しかも汎用性のある方法だと思いました。教員間の議論・活動につなげるためには、まず、このような段階を踏んだ慎重な進め方が必要だと思います。
統計データはいくらでも細かく(時にマニアックなまでに)できると思いますが、それより重要なことは、どういう課題(ここでは「適切な成績評価を教員間の議論・活動につなげる仕組みを構築すること」)を解決するのか、ということではないでしょうか。
プレゼン資料も簡潔で見やすいものでした。テキストだらけのスクリーンに慣れている身にはかえって新鮮に感じました。
最後に一言。質疑応答の折、質問者に発表者ご本人がマイクを渡しておられまして、これには感心できませんでした。今回は、タイムキーパー兼補助者はいなかったのでしょうか。お気の毒でしたので、あえて指摘させていただきました。
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