大学職員像を問う―新しく要求される大学職員像、その形成に必要なものは?(7)

スポンサードリンク

「戦略経営人材の育成」篠田道夫(桜美林大学 教授・日本福祉大学学園 参与/大学マネジメント・大学職員論)

要約

1.戦略スタッフとしての職員の登場

  • 職員に「戦略スタッフ」として役割が求められるようになったのは、ここ10年くらい、中長期計画が普及してからのこと
  • 中長期計画は大学の目指す旗印であり全分野にわたる改革の総合作戦。これなしに教育の質向上、特色化、評価向上はない。
  • 中核職員の感度、問題意識、企画提案力が求められ、これが大学全体の改革力のレベルを決める。
  • 中期計画の原案は職員中心に作られている。
  • 従来型の事務では果たせない企画・調査の業務が拡大、それを担う、力のある人材が求められている。

2.求められる力とは何か

  • なぜ職員が戦略的経営人材になり得るのか。それは、職員が大学行政のあらゆる現場に居て改革の最前線で仕事をしていることによる。
  • 掲げた目標の推進に向け、現場のデータや実態、最新の情報、他大学調査、政策動向を踏まえた提案が現実方針のベースとなる。外部のステークホルダーのニーズや要望・批判は現場でしか掌握できない。
  • 職員固有の役割とは、この実態と政策とをつなぐこと。政策の発信源であり最終実行者であるところにある。まさに、現場職員の発信力、提案力、創造的実践力が求められている。
  • 自大学の戦略や資源、高等教育政策の動向、他大学との競争関係などから、自らの業務の位置、提起する改革の必要性を客観的に明らかにできる力が不可欠
  • 専門的力量とゼネラルな知識の結合、部分最適から全体最適への視野の広がりが決定的に重要
  • 中核事業の改革方針を自ら立案し、意思決定に持ち込み、実行マネジメント(PDCA)できる戦略経営人材が求められている。
  • 分析力、問題発見力と言っても、自大学の現状とあるべき姿、実現する目標とのギャップを明らかにし、その真の原因、解決につながる情報をつかみ、問題の本質に迫れるかが肝心
  • 論理的思考力とか開発力、計画力も、問題意識を持ち、結論に至る流れを論理的、実践的組み立て、ゴールに到達する道筋、方法や手順を策定し、説得力ある提案書にまとめ、プレゼンし、決定・実行にまで持ち込めなければ意味がない。

3.職員育成制度の現状

  • 年1〜2回の知識習得型研修だけではなかなか力は付かない。
  • 戦略経営人材を担える人材育成にはまだ課題がある。

4.戦略経営人材養成への挑戦

  • 福岡工業大学、森ノ宮医療大学、日本福祉大学。この3大学に共通するのは、実践的な開発行動に学習・研修を結合させている点
  • 政策の浸透・共有こそが目標達成への唯一の道
  • 採用から異動、各種研修・育成制度の整備・高度化、人事評価制度の充実・改善、管理者昇格・育成システムの改革、政策立案業務の体験を通したトータルな育成システム(OJB)のそれぞれの大学に合った形での構築が不可欠。そこに大学院など外部専門教育機関を位置づけ、そのゴールに戦略経営人材の育成を置かねばならない。

5.戦略経営人材の位置と可能性

  • 力を発揮できる組織運営、役割や権限問題の解決が必要
  • 現状は職員が教学運営(提案や意思決定)に参画が出来ていない大学が半数に上る。
  • 大学設置基準の第41条、職員は「事務を処理する」では、現実に果たしている役割とも、中教審等が提起している内容とも大きくかい離し、これは教授会自治、教員統治の伝統と相まって職員の運営参画を押し止め、また、力量の本格的強化を遅らせてきた。
  • 職員が、役割にふさわしい位置づけを確保することと戦略経営人材の育成はコインの裏表、どちらが欠けても実現できない。
  • 戦略経営人材の育成とその権限拡大、運営参画の飛躍的前進を作り出さなければならない。
  • 戦略経営人材の育成は最優先の課題

感想

例によって引用ばかり多くなってしまいましたが、それは著者の主張に同意しているからにほかなりません。

外部のニーズや要望・批判は現場でしか掌握できない、というのはそのとおりだと思います。課題は、それに気づく感度、問題意識、企画提案力を磨かねばならないことです。

研修・育成制度の整備・高度化→評価制度の充実・改善とOJT→大学等の外部専門教育機関で学ぶ→ゴール(戦略経営人材の育成)。このようなトータルな育成の流れが必要な時代になってきました。

私の職場は比較的職員が活躍できる環境なのですが、そうでない大学も全国では半数あるのですね。そういう中で頑張っておられる職員の皆さんにはエールを送りたいです。

「こんな時代に教員主導でいつまでもやれるはずがない。きっと職員が活躍せざるを得ないときが来る」と。

The following two tabs change content below.
大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

スポンサードリンク