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はじめに
レイモンド・カーヴァー。
村上春樹が翻訳しているのでその名は知っているけれど、まだ読んだことのない人。読んだことはあるけれど、もっといろいろなことを知りたい、という人は多いかもしれません。
誠光社・堀部篤史氏が、カーヴァーの魅力とその周辺のことについて教えてくれます。
「トーク・アラウンド・ブックス2015」での堀部氏のトークをご紹介します。文末で、同氏と奈良県立図書情報館による文献リストもご紹介します。
前回のレポートはこちら。
トーク・アラウンド・ブックス2015@奈良県立図書情報館で『アメリカの鱒釣り』についてトークする | Curation 大学情報をキュレーション
トーク・アラウンド・ブックス 本とその周辺をめぐる読書会 第5回
2016年1月15日(金)18:00〜19:50
@奈良県立図書情報館

読書がもたらしてくれる「リンク」
堀部氏はこのイベントについて、つぎのようにメッセージを寄せています。
本を読むということは、そこに書かれているあらすじを読むだけの行為ではありません。その本が書かれた時代背景や、作家の生い立ちに個性、舞台装置として描かれる場所や文化、本のなかに登場する映画や音楽、時には本のなかで語られる本などを読み解きながら、書物の外側へと繋がっていく行為です。
今回の読書会では、毎回みなさんと一緒に一冊の本を手にとることで、外の世界へと繋がっていく快感や驚き、つまり本来読書がもたらしてくれるはずの「リンク」について今一度考え直してみようという試みです。
今回のテキスト
『レイモンド・カーヴァー傑作選 Carver’s Dozen』(中公文庫)です。
村上春樹氏がセレクトした1ダースの作品集です。

コーヒーとケーキ
毎回楽しみな堀部氏セレクトのコーヒーとケーキ。
今回は京都の六曜社&かもがわカフェのブレンドで、「コクはあるけどすっきりしたあと味」とのことでした。

ケーキは、これまた京都のKathy’s Kitchenによるラズベリー&オレンジ入りのチョコレートケーキでした。これは、同書のシーンにちなんだ、子どものためのバースデーケーキをイメージしたそうです。
いや、おいしかったです。
『レイモンド・カーヴァー傑作選 Carver’s Dozen』をめぐって
それでは、堀部氏のトークです。
レイモンド・カーヴァーの小説
文章はわかりやすい。だが、
- 突き放す。
- 冷たい、殺伐とした雰囲気
という作風。
今回のテキストには入っていないが、『月曜日は最悪だとみんなは言うけれど』を読むと理解が深まる。
「同時代感」が欠如しているが、古びない普遍性がある。
映画
- 「バードマン」
- 「Short Cuts」ロバート・アルトマン監督
カーヴァーのいくつかの短編をもとに、10組の人々の日常の中にひそむ非日常を鮮やかに描いたもの。カーヴァー・カントリーを具現化したもの - 「マグノリア」ポール・トーマス・アンダーソン監督
ゴードン・リッシュという編集者
- 「December」というリトルマガジンを編集していた。
- カーヴァーはリッシュがいたから売れた?
- しかし、カーヴァーは晩年リライトばかりしていた。
- ゴードンはカーヴァーが世に出るきっかけを作った。
ミニマリスト
- ゴードン・リッシュの影響
ミニマリストの特徴
- 心理描写が省かれる
- 状況説明が簡略化
- 結論が放り出される
これらはカーヴァーがもともと持っていた資質であり特徴。
カフカ的不条理(「あなたお医者様?」「風呂」)
これらは、ヘミングウェイの「氷山の一角理論」。
カーヴァーの作品を分析すると、
- ミニマリスト
- ニュー・コンサバティブ
- ダーティ・リアリズム
となるが、私小説ではない技巧がカーヴァーを特別な存在にした。
チャールズ・ブコウスキーという作家をはじめ、カーヴァーがシンパシーを感じる作家は“苦労人”。
サリンジャー、ブローティガン、カート・ヴォネガットのものなど、伝記を読むと面白い。
まとめ
気づき
何気ない市井の人たちの心理を、削りに削った文体で表現したレイモンド・カーヴァー。すべてを表現しないことによって、読者のイマジネーションを広げる作品群。
苦労しながら作家活動を行っていた点にも共感を覚えました。
私ももっと多くの作品を読んでみようと思います。また、今回紹介された映画もすべて観なければ、と思いました。
毎回、そういった心躍る刺激を与えてもらえるイベントです。
関連図書リスト
こちらです。
充実した内容です。
次回 第6回(最終回)
テキストは『いちばんここに似合う人』ミランダ・ジュライ(新潮クレスト・ブックス)ですが、できれば『あなたを選んでくれるもの』 (新潮クレスト・ブックス)もあわせて読んでください、とのことでした。

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