反知性主義的空気と大学改革 竹内 洋ー「IDE現代の高等教育」No.575 特集:文系の危機を読む(7)

「IDE現代の高等教育」No.575

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「IDE現代の高等教育」No.575 特集:文系の危機を読む(7)

今回は「反知性主義的空気と大学改革」。著者は竹内 洋氏(関西大学東京センター長/教育社会学)です。

ではご紹介しましょう。

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臆面なき大学改革

  • この通知は、文系は社会的要請にあう学部や大学院に組織変更せよと言っているだけとは、思えない。文系学部・大学院の縮小、さらには国立大学から文系を廃止したいという狙いが透けて見えてくる。
  • グローバル経済競争、科学競争のために国立大学の文系を廃止や縮小してその予算と人員を理系に再配分したいということだろう。

はじまりは「誘導権力」から

  • 文部省が科学技術庁と統合されて文部科学省(2001年)になったあたりから、大学政策は他者の意志に逆らって自らの意志を実現する「命令権力」ではなく「誘導権力」(power to constrain)をさかんに行使するにいたった。誘導権力は、行為を命令しなくとも、支配される側が自己の利益のために最良だとおもい、自らそのように行為するように誘導する権力である。
  • 文科省は大学政策を円滑に実施するために、大学が自由裁量できる予算を削減し、その分を推進すべきと思うプロジェクトや入試改革などの制度改革に補助金や予算をセットにするようになった。しかもこのような活動が大学評価と連動するように仕組まれている。大学改革はいやいやではなく、率先しておこなったほうが「お得」なものとなった。
  • 今回の国立大学文系改組・縮小・廃止通知は、内堀どころか、内堀をこえて、建物内部に鎧兜で進出して、いうことを聞かねば、とり潰すぞと土足で入ってくる仕儀となったのである。「誘導権力」の行使というステップを経て赤裸々な命令権力の行使にいたったわけである。

実学主義といいながらも

  • 実学主義は、近代日本の高等教育の根幹の思想ではあった。
  • 文系中の文系である文科大学は帝国大学誕生によっておとり潰しにあったわけではない。厳として存在した。私立大学でも、文学部は一部大学には存在しつづけてきた。旧制高校や大学予科のカリキュラムは、人文学に重きがおかれた。
  • 文系科目は実用知をまなざす超越性の契機があることで一目おかれさえした。
  • 文系的教養や知性が自省や超越の働きをしていたのである。
  • 政治家や財界人、官僚に、大学の洞察機能や批判機能の役目を認めるところがあった。

エリートの反知性主義

  • 反知性主義が大衆にあって、エリートがそれをポピュリズムの手法としてそれを利用しているのではない。エリートそのものが反知性主義的なのだ。
  • 知能は実用知であるのに対し、知性は洞察知や批判知である。だから反知性主義というのは、知識一般を無用とするのではない。知能は重んずるが、洞察知や批判知を無用とする。
  • 反知性主義は「知的な生き方およびそれを代表する人びとにたいする憤りと疑惑」となり、「そのような生き方の価値をつねに極小化しようとする傾向」である。
  • いまの声の大きな一部エリートには「知的な生き方およびそれを代表する人びとにたいする憤りと疑惑」という気分が共有されるにいたってはいまいか。
  • であれば、グローバル競争にサバイバルできるための大学改革は渡りに船といったあんばいだったのではないか。

「無」知性主義かも

  • いまの日本の声の大きな政治家や財界人に垣間見られる反知性主義には(対抗勢力としての)可能性は微塵も感じられない。「反」知性主義というよりも、「無」知性主義かもしれない。
  • そもそも、今回の通知がなぜ国立大学だけなのか。大学政策の根幹に関わるものなのに国立と違って文系が主流を占める私立大学については何も言及がない。私立大学における文系は現状でよいというのか。また私立大学理系はいらないというのか。そのままでいいというのか。大学政策なら国立大学の改革は私立大学との改革とセットで出されるべきであろう。とても全体的な構図を頭において出てきたものとは思いにくいのである。

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深い洞察や批判を避け、竹内先生に倣っていえば「大政翼賛的」に行っている大学改革。これこそ「反」知性主義的なものではないでしょうか。

大学こそ、真の知性をそなえた次世代の人材を養成しなければなりません。そういった「知性主義的」な頭脳が、グローバル経済競争、科学競争に適応し、勝ち残っていくのでしょう。

文理系いずれの学問も重要だということを忘れてはならないと考えます。

 

⇒第9回:「人文の力」ー金素雲『朝鮮詩集』による経験からを読む。

【目次】文系の危機―「IDE現代の高等教育」No.575 2015年11月号を読む

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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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「IDE現代の高等教育」No.575