大学コンソーシアム京都の第21回FDフォーラムの報告集が公開された。
そのシンポジウムに登壇されたNPO法人NEWVERY理事長・山本 繁氏の発表内容が、非常に参考になる。
今回は「イマドキの学生募集の成功と失敗」である。
筆者なりにまとめたものをシェアしておきたい。
イマドキの学生募集の成功と失敗
「うちの大学は失敗事例の5つ以上当てはまるのではないかと思われる方、手を挙げていただいてもいいですか…7割ぐらいの手が挙がりました」…。
失敗事例とは、下図のとおりである。
これらは、同法人が支援した大学の成功事例の特徴である。
失敗事例
- 全国広告みたいなものにお金を投じてしまっている。
- 進学サイトの資料請求を重視。
- 競合校に合わせる。
- 教育内容を一生懸命伝える。
- 教育成果を大学全体値で伝える。
→うちの大学の就職率は何パーセントですといった表現。
- 教育方法をテキストと写真で伝える。
→日本の大学のホームページやパンフレットはほとんど中身が一緒。
日本中の大学が少人数教育をやっていて、職業へつながる実践的な教育をやっていて、英語にも力を入れている。
キャンパスの種類は都心に近いキャンパスと緑豊かなキャンパス、2種類しかない。
広報というのは手法であり、最適化すればその大学の教育力にふさわしい学生が集まるようになる。
ただし、それ以上先は、教育力を上げるしかない。
まとめ
「(成功事例を)複数のことをやっている大学が多い」と述べておられるが、筆者はこれを「全部戦略」と呼んでいる。
全部実行すれば効果が指数関数的に増加するにちがいない。
上記のすべてが納得できる指摘だが、ここでは1点だけ感想を述べておきたい。
「紙・マス広告を強化する」から「ネット広告を強化する」へ
あくまで筆者の経験だが、同窓会のOBや企業から天下ってきた職員の人たちの多くがこう言うのを聞いてきた。
「大学名すら知られていない。もっと広報に力を入れないといけない。スポーツでもなんでも、露出して大学名を知ってもらわないといけない」と。
この人たちの言う「広報」とは従来のマス広告を指しているのではないか。
そうであれば、全国津々浦々に大学名の入ったノボリを立てておけば、さぞかし大学名は知られることだろう。
広告効果はあるだろう。
だが、そこには以下のような認識が欠けている。
- コストパフォーマンス(費用対効果)
- 訴求対象のセグメンテーション
- ネット時代の広告手法
マス広告の時代は終わったといわれて久しい。
そしていまは、ネット広告、SNSを使った口コミ、そして訴求対象(自分の大学に入学してほしい受験生の属性)を明確にしたコストパフォーマンスのよい広告など。
別段あたらしいものではなく、世間では私たちがすでに見聞きするものである。
これらを理解できない、しようとも思わない教職員がいたら…。
人事のところで挙げられているように、その人(たち)を変容させる余裕も、その可能性も少ないから、当然人を替えねばならないだろう。
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