「学生支援人材に求められる専門性と取り組み姿勢」五藤勝三(関西大学 常任理事 法人本部長)
要約
1.学生像の変容と学生支援
- SPS(厚生補導)の考え方
- 『大学における学生生活の充実方策について(報告)―学生の立場に立った大学づくりをめざして―』(いわゆる廣中レポート)
- これからの大学は、研究に重点を置く「教員中心の大学」から、教育・指導に重点を置く「学生中心の大学」へと転換し、大学教育は学生に知識を教授するだけでなく、学生と教職員との人間的なふれあい、切磋琢磨を通じて、高い倫理性・社会性を身に付けさせなければならないことが強く求められた。
2.学生支援業務における教職協働
- 大学の「学校化」、学生の「生徒化」も問題となっている。
- これからの私立大学においては、教員の採用時に、とりわけ専任教員の職務として、教育(授業・演習・実験等の正課教育)と研究や学内行政の業務のほかに、学生の人間力を養成するための正課外教育としての学生支援業務があることなどを契約上明示していかなければならないのかもしれない。
- 事務職員も教員の補助者あるいは単なる事務処理担当者に留まらず、学生支援などの所管業務の課題等について主体的に考え、必要に応じて教員に意見を述べ、提案・助言できるレベルにまで職務遂行能力の開発・向上を図っていかなければならない。
- 所属大学の教学方針・経営方針などの全体を俯瞰して学生支援の諸活動をトータルにコーディネートする力を有する職員が必要になってきた。
3.学生支援業務の担当者に求められる専門性
- 所属大学に固有の学生支援の諸課題を総合的に把握し、その課題に対する解決策を企画立案し、実行する能力、その結果を評価してさらなる改善に向けてトータルにマネジメントする力が求められるようになってきた。
- 学生支援担当者に求められる知識・スキル
(1)高等教育を取り巻く社会・経済情勢、高等教育政策や行政の動向、所属大学の教育・研究及び経営方針等、さらには、学生支援業務に関する専門知識の修得
(2)学生支援業務の企画・立案、実施等を可能にするスキルとして、
①学生・教職員との関係構築の基礎としてのコミュニケーション力(傾聴力、アサーション力、ホスピタリティ・マインド、カウンセリング・マインド等)
②学生の諸活動を調整し、全体としてまとめるコーディネート力(政策立案能力、シナリオ構成力、組織化能力など)
③学生の諸活動が容易にできるよう支援すべく、学生の主体性を尊重しつつ上手くことが運ぶように舵取りを行うファシリテーション力なども必要
(3)人的ネットワーク構築力
4.まとめに代えて―学生支援業務担当者の取り組み姿勢
(1)「学生のためになること」は何でもやろうとする情熱をもつこと
(2)関係者の声を誠実に受け止め、誠意をもって対応すること
(3)学生の満足度を高め、人間的成長を図ること
感想
重要だと感じたことは、
- 教育・指導に重点を置く「学生中心の大学」へと転換し、学生と教職員との人間的なふれあい、切磋琢磨を通じて、高い倫理性・社会性を身に付けさせる。
- 諸課題を総合的に把握し、解決案を企画立案・実行・評価して、改善に向けてマネジメントする力が求められる。
の2点です。
また、「教員の採用時に、教育と研究や学内行政の業務のほかに、学生支援業務があることなどを契約上明示していかなければならない」ことも、これからは必要なことかもしれません。
ところで、学生支援系の「高度専門職」のイメージとしては、
- 学生相談員
- 留学生相談員
- スクールカウンセラー
がありますが、近年需要が生じてきているものに、
- 学生生活ソーシャルワーカー
があるそうです。
多岐にわたる学生支援の業務に携わる職員は、マネジメント層と一般職員等とを問わず、その諸活動をトータルにマネジメントする力が求められているようです。
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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