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SDの義務化とこれからの大学職員 by 松井寿貢 |『私学経営』から

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はじめに

『私学経営』No.513(2017年1月)からのご紹介。

著者の松井寿貢氏は、学校法人石田学園 広島経済大学の理事・事務局長である。

いよいよ本年4月からSDの義務化を迎えるが、全学的な取り組みが遅れている大学もあるかもしれない。

本稿は現役の事務局長からのメッセージである。

現場の職員の皆さまの参考にしていただければ幸いである。

松井氏はここで、

  • SDを有効に機能させるための要点
  • 私立大学等改革総合支援事業への対応として、どのような実施方針・計画が全学的に策定・実施されていることが必要か。
  • 義務化されても自己研鑽が基本
  • これからの職員は、専門的能力も開発しながら、ゼネラリスト的に進んでいく。

ということについて、中教審の答申も時系列に紹介しながら、示唆に富む提言を行っておられる。

筆者が重要だと感じたことを中心に、以下ご紹介しよう。

SDの義務化とこれからの大学職員

大学設置基準の改正によるSDの義務化

「大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知)」による留意事項のポイントは、次の2〜4。

留意事項2「対象となる職員」について

  • 「職員」には、事務職員のほか、教授等の教員や学長等の大学執行部、技術職員等も含まれること。
  • 文章は重要な事項から記述されるとすれば、事務職員が最初に記述されていることは、全教職員の研修が必要であるが、特に事務職員の研修が基本事項と理解してもよい。

SD(スタッフ・ディベロップメント)の対象は事務職員だけじゃないの?

留意事項3「機会を設けること」について

  • 各大学の実態に応じて、計画的・組織的にSDを企画することが肝要。

留意事項4「その他必要な取組」について

  • SDの規定化、または年度毎のSD実施計画書等の全学的・組織的な策定等が求められている。
  • 職員研修を実施する場合に、その実施要綱を人事課が起案して理事長または学長までが了承しており、全学的・組織的に実施する。

中教審答申等におけるSD義務化までの経緯・背景

我が国の高等教育の将来像(答申)平成17年

  • 専門的人材について、教員と職員を問わず、適性のある者がその任にあたればよい。
  • 教学PDCAサイクルを回して教学マネジメントに当たる教職員は、内部育成が即戦力になり得る。

もう一つの背景

  • 私立大学(学校法人)においては、歴史がある大手の私立大学を含む諸先輩や、団塊世代の私と同世代の職員の話を聞くにつけ、どの私立大学にも大なり小なり、教員が主で職員が従という構図があったようである。
  • 過去の時代を知る私立大学職員は、今回のSDの義務化は歴史の流れを感じさせるとともに、それほど私立大学を取り巻く環境が一層厳しくなったことをも感じさせる。

SD義務化について考える

SD義務化の目的

  • SD義務化は手段であり、その手段を有効に機能させるためには、次の2点が要点。

①職員自らがSD義務化の目的を知り、業務に精励して研鑽を重ね、地力をつける。
②任用権者が教職協働の理念の基で職員を登用する。

私立大学等改革総合支援事業への対応

  • 次のような実施方針・計画が全学的に策定・実施されていることが必要。

【SDの対象】
教職員

【SDの実施方法】
①学内での研修
②学外研修会への派遣
③自己啓発支援

【SD実施項目】
①3つのポリシーに基づく大学の取組みに関すること
②自己点検・評価と内部保証に関するもの
③教学マネジメントに関わる職員の育成に関するもの
④大学教育改革に関するもの
⑤学生の厚生補導に関するもの
⑥業務領域の知見の獲得、スキルアップに関するもの
⑦その他、教職員の育成に関すること

①3つのポリシーに基づく大学の取組みに関するものは、これまで実施していない大学が多い。

SDの義務化で大学職員は成長するか

  • それだけでは否。
  • 職員自らがSD義務化の目的に気づき、本気で働き学ばないと身につかない。
  • 職場の研修制度は自己啓発の動機付けであり、自己研鑽(自己投資)が重要。
  • 自己研鑽を基本にして、大学がそれを支援し研修や他流試合(他大学教職員との議論や異業種交流)を重ねることが効果的。

これからの大学職員

ゼネラリスト

  • これからは、教員系の大学アドミニストレーター以外に、トップ層を補佐する職員系の大学アドミニストレーターが、量的にも質的にも求められる時代が来た。
  • 課題発見能力、戦略策定能力と戦略実現能力が求められる。

ゼネラリストか専門職か

  • 専門的能力も開発しながら、ゼネラリスト的に右肩上がりに進んでいくというのが現実的。
  • ある段階からは専門業務に強くなる職員がいたり、管理業務に強くなる人がいたりする柔構造人事になるのでは。

まとめ

周知のように、文部科学省では、中教審大学教育部会(第44回)配布資料「大学の事務職員等の在り方について」のとおり、「大学の事務組織及び事務職員が、当該大学の目標の達成に向け、これまで以上に積極的な役割を担い、大学運営の一翼をより一層発揮できるよう」規定の見直しが予定されているところである。

過去の時代を知る私立大学職員は、今回のSDの義務化は歴史の流れを感じさせるとともに、それほど私立大学を取り巻く環境が一層厳しくなったことをも感じさせる。

という言葉が、筆者のような年代の身には沁みる。

これからの大学職員は、外的環境は厳しさを増すけれども、学内での環境はこれまでとは異なりー多忙で高度な業務にはなるかもしれないがーやり甲斐のあるものとなるのではないだろうか。

今後は、

  • 必要な能力とは具体的に何か?
  • 経営力とは具体的にどういう能力か?

といった具体的な議論に移行し、理想的なモデルが提示されることが望まれる。

それを待ち望んでいる職員も多いことであろう。

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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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