『大学マネジメント論』山本眞一・田中義郎(放送大学教育振興会)から。
放送大学の教材として発刊された本書。大学人が知っておくべき事柄がコンパクトに掲載されており、文字どおり教科書として使用できる良書である。
さすが放送大学という感じだが、いずれまとめてご紹介したいと考えている。
今回は「第1章 大学と私たち」をご紹介する。
そこには大学人があらためて心しておかねばならないことが記されているからである。
いずれも環境の変化に関するものである。
大学職員があらためて心しておくべき3つのこと
- 大学教育の役割変化
- 18歳人口の減少問題
- 如何にして特色ある発展を目指すか?
1.大学教育の役割変化
- 1990年以降、企業と大学の関係は大きく変わった。
- 企業は大学の即戦力教育を求めるようになり、大学の教育内容の充実を求めるようになった。
- その教育内容とは、学生の就職に役立つ基礎的職業教育を重視していくという方向を目指すもの。
2.18歳人口の減少問題
- 2050年には70万人まで減少する見込み。
- 実際には70万人を下回るケースも十分に考えられるところであり、大学関係者はこのことに留意する必要がある。
- この予測値を重要な参考情報として、これを前提に大学・短期大学の将来戦略を練らなければならない。
- その変化の兆しは2020年前後には出現するわけで、当面はその変化の時点に備える必要があり、これは現在大学に関係しているわれわれ世代の責任。
3.如何にして特色ある発展を目指すか?
- 特色ある発展は、決して競争的環境から逃れることではない。似たような大学同士では競争はさらに熾烈を極めるものと思われるからである。
- これは「大学のマネジメント」全体に生じる一つの課題。
まとめ
大学の主要な役割は、その本来の目的である教育・研究に加えて厳格な入試を行うことによってその入試をパスしてきたという能力を証明するということに重きが置かれるようになった。すなわち将来、企業で仕事をこなしていくのに十分な能力を備えているか否かということが問題であって、大学教育でどのような専門性を身に付けてきたかということは、とりわけ人文・社会科学系(いわゆる「文化系」ではほとんど不問に付されていた。
このような状況の下では、大学の側に教育内容を充実させようというインセンティブは働かない。
これまでのーとりわけ文化系のー問題点がみごとに剔抉されている。
それぞれの大学が特色ある発展を目指すことこそが、もっとも重要だと考える。
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- 作者:山本 眞一,田中 義郎
- 出版社:放送大学教育振興会
- 発売日: 2014-03
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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