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日本の大学職員−調査データから 両角亜季子(東京大学教育学研究科総合教育科学専攻大学経営・政策コース 准教授/大学経営論)
要点
○学校基本調査から
- 大学職員数は約13万人
- 教員は約18万人
- 学生が約286万人
1.大学職員のしごと
「全国大学事務職員調査」(東京大学大学経営・政策研究センターが2010年に実施)から
- 学生や教員への対応 65%
パターンが決まった職務の実施 50%
組織内での調整、合意形成 40%
課題の分析・解決 27%
意思決定・管理 19%
新規事業の企画・開発 16% - 職員の役職が上位になるほど、「意思決定・管理」のみならず、「課題の分析・解決」、「新規事業の企画・開発」の仕事が多いのは、事務組織がこうした点で重要な役割を担っているから。
- 私立大学の職員ほど「学生や教員への対応」が多い。
- 私立大学ほど「課題の分析・解決」、「新規事業の企画・開発」に大きなウェイトを占めている職員が多い。
- 国立大学の組織改革と職員の仕事の在り方については、さらに検証すべき重要な課題
私学高等教育研究所が2006年に日本私立大学協会加盟校の理事長を対象に行った調査から
- 経営戦略・経営計画、事業計画、通常の重要案件などの(理事長から見た)事務局の影響力は、教授会よりもはるかに強く、実質的に果たしている役割はかなり大きい。
2.大学職員のキャリア
「事務局職員の力量形成に関する調査」(私学高等教育研究所が私大協加盟校の事務局長に2009年に尋ねた調査)から
- 規模が大きいほど、部署の数も多いせいか、異動回数が多い。
- 大学職員の職場の人事制度に対する評価は高くない。
- 深刻なのは、「一定のキャリアモデルが示されている」に18%しか、肯定的評価をしていないこと。
- 管理職ほど問題視しており、設置者別では公立や私立で評価が低い。
3.今後の職員の在り方
(1)経営参画を最も望む
- 経営の場面で職員参加が進むことによる効果を検証してみるとおもしろいかもしれない。
- 職員自身も今後のキャリアのために、
「データを収集し、分析する能力」41%
「大学についての幅広い知識」38%
「特定の業務についての専門的知識」38%
を「とても学びたい」と回答している。
「全国大学教員調査」(東京大学大学経営・政策研究センターが2013年に実施)から
- 「事務職員の業務能力を高めて、責任と権限を持たせるべきだ」という問いに対して、
「そう思う」27%
「ある程度そう思う」55%
となっており、職員のみならず、教員もこうした方向性を支持している。
(2)キャリア選択
- 一定時点でキャリアを選択させろという要求は、職位や大学特性によらず共通の課題
- キャリアが明確になれば、必要な経験や知識もより具体化する効果が期待できる。
(3)専門職化
- 一般専任職員ほど、こうした方向性を支持
- 小規模校の職員ほど、こうした方向性を望んでいる。
- 専門職化の方向性は、大学の特性によって必要なあり方は異なる面もある。全体的な議論と同時に、個々の大学での模索、その経験の共有もまた重要
感想
- 人事制度に対する評価が低い。
- キャリアモデルが示されていない。
ということが調査結果で示されていることから、
- キャリアモデルを示す。
- 一定時点でキャリアを選択できるようにする。
- 人事制度への信頼を高める。
ことが必要となります。
そんな中で職員自身が学びたいことは、
- データを収集し、分析する能力
- 大学についての幅広い知識
- 特定の業務についての専門的知識
とあります。
さらに事務職員に責任と権限を持たせることについて、教員も支持しています。その条件として、職員が業務能力を高め、教員から信頼されることが必要となります。そのためには、職員から評価される人事制度と、自己啓発のための環境づくりが求められるのではないでしょうか。
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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