「私立大学における財務・会計人材の育成」杉﨑正彦(國学院大学 財務部長)
要約
1.はじめに
- 「財務や教務などの伝統的な業務領域においても、(中略)職員に求められる能力とは何かを分析し、明確にしていくこと」(中央教育審議会『学士課程教育の構築に向けて(答申)』がまず必要
2.私立大学における財務・会計担当者の業務範囲
- 簿記会計(この知識を前提に決算書が作成できる)と税務
- 決算ではその知識とスキルが不可欠であるし、日常業務に会計基準の知識が必要ないと言っても、その知識があるのとないのとでは、日常業務の質が違ってくる。
- 財務分析や財務戦略を策定できるようにしていかなければならない。
- 学校法人会計は、中長期的な収支均衡を目指すように設計されており、それらの理解と中長期の財務計画の策定能力が必要
- 財務・経理部門においても、内部統制や情報公開等々の理解や社会的責任の知識を持った財務・会計人材を育てていく必要
3.私立大学における財務・会計人材育成の現状
- 財務・会計に携わる人は結果的に人事異動のサイクルは長くなっていることが多い。
- 決算数値を作り上げていくための経験を積ませるのに時間がかかる。
- 外部の研修会で基本的な知識を習得させ、その知識を実務と結び付けることにより決算書作成の能力や、税務を理解できる人材を育成しているのが現状
- 他の部署の業務は外注化が進んでいて、財務・会計もそのような方向になる可能性がある。
4.財務・会計人材育成の課題〜財務に関する興味関心度
- 財務の知識は、コスト意識をもつうえでも、大学職員すべてが備えておくべき知識である。
- 大学職員の「財務への興味関心度の低下」が懸念されている。
- まだ自分の業務に手一杯の段階にある若手職員が増えたこと、職員が以前に比べより深く教育・研究に関わってきたこと、職員の人員が削減されているにもかかわらず業務量は増え続けた結果として、自分の仕事を全体の枠組みの中で十分に把握する余裕がないことが原因ではないかと分析している人が多い。
- 「若者の数字離れ」
- 中堅経理マンの人材不足
5.私立大学における財務・会計人材の今後
- 日商簿記検定を含め企業の取り組みを利用することは有益
- 大学団体がその育成の一翼を担うことが有益
感想
財務・会計部署に配属されたことはなく、業務経験がない身としてはコメントは差し控えたいと思います。
それでも「財務の知識は、コスト意識をもつうえでも、大学職員すべてが備えておくべき知識」ですから、以前下記の参考書などで勉強したことはあります。もうすっかり忘れてしまいましたが・・・。やはり仕事は身体で覚えないといけませんね。
財務への興味関心度低下の原因が「余裕のなさ」ではないか、ということが気になりました。このことは他の業務にも言えることで、上記の分析どおりだと感じます。
誤解を招く表現かもしれませんが、職場にもうすこし余裕がほしいところです。イッパイイッパイの状態でイノベーションを起こすことなど望むべくもありません。「忙しい」と「慌ただしい」とは似て非なるものです。前者でありたいものだと考えます。
The following two tabs change content below.
大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
最新記事 by 瀬田 博 (全て見る)
- 2040年代における大学の役割と使命 大学行政管理学会(JUAM) 特別シンポジウム(3) - 2018年12月25日
- 2040年代における大学の役割と使命 大学行政管理学会(JUAM) 特別シンポジウム(2) - 2018年12月20日
- 2040年代における大学の役割と使命 大学行政管理学会(JUAM) 特別シンポジウム(1) - 2018年12月19日