偏差値50以下の私立大学の「高等教育機関」としての存在価値はあるか

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はじめに

「私立大学の没落傾向に歯止めはかからない-追手門学院大学の努力は望み薄であり,偏差値50以下の私大に「高等教育機関」としての存在価値はみいだせない」(社会科学者の随想)から。

「追手門学院、新キャンパス展開 生き残りへ規模拡大 文理融合で評価高める 私大、半数は淘汰 川原理事長に聞く」(『日本経済新聞』2016年6月20日朝刊)についてである。

このエントリーの目的は、

  • センター入試偏差値 35.0〜40.0 程度の大学に存在価値はあるのか?
  • 私大経営が悪戦苦闘しているが、はたして、世の中のために有用なその営為なのか?

と冒頭にある。

そして、ポイントを以下の3点としている。

  • 独自の生き残り戦略を練る大学が少なくない。
  • 大学過剰減少は18歳人口との関係でみれば、大昔から《自明の大前提》。
  • 高等教育に関する基本理念・的確な将来計画・具体的な実施要領をもたないようでは、だらしなく弛緩した大学教育行政体制がこれからもしばらく続いていく。

筆者なりにまとめた内容をご紹介しよう。

「追手門学院、新キャンパス展開 生き残りへ規模拡大 文理融合で評価高める 私大、半数は淘汰 川原理事長に聞く」

【追手門学院理事長】への【日本経済新聞】によるインタビューである。

【著者】は上記サイトの著者のコメントである。

 

【追手門学院理事長】

戦略の要は規模の拡大。

収入の8割前後を授業料や入学金に依存する私立大学では、定員増以外に収入を増やす有力な手段がない。

これが、18歳人口が減っても定員割れ大学が増えても、新学部の設置や定員増、キャンパス拡大が続く理由である。

【著者】

現状維持志向のままで、日本の大学とくに私大が経営を続けていくのであれば、このさきには高等教育体制のさらなる溶融・瓦解が進展するみこみしかもてない。

不要・無用の大学が多すぎる。

【Q:日本経済新聞】

数年後に18歳人口はさらに減少する。

なぜ、この時期に新キャンパスなのか?

【A:追手門学院理事長】

狙いは生き残りを懸けた新たな事業展開。

理系をにらんだ新学部が必要だという思いが出発点。

【著者】

理系まで幅を拡げなければ、学生集めがよけい苦しくなるというだけの話。

「世の中の激しい動き」が、この水準の大学にまで教育内容に関して、「関連するような要求」を、本当に突きつけているのかといえば、それほどでもない。

【A:追手門学院理事長】

新キャンパスには、現キャンパスから既存学部のいくつかと中学・高校を移し、空いた現キャンパスで理系か文理融合の新学部を設置したい。

【著者】

非一流私大が,学部全体を総合的に整備・編成し,充実させていくという発想は,経営政策的には理にかなった方向性。

しかし、大学経営=高等教育市場(ドメイン)全体のなかで、はたして的確かつ必要な狙いであるかといえば、むしろ無理がある。

【Q:日本経済新聞】

地方大学は大都市の大学の拡張路線に不満を募らせている。

【A:追手門学院理事長】

(志願者を確保できるかどうかの)差は、魅力ある教育を充実させているか否かの差。地方の大学は、もっと地方にあるという特色を生かすべき。

いずれ私立大の半分くらいは淘汰される。

これからは,社会の要請に適合した大学だけが生き残る。

追手門学院大学が生き延びるのに,6500人といういまの規模は中途半端。8千人から1万人程度の規模がほしい。

【著者】

私立大学においては,経営維持のための戦略問題が、高等教育機関である大学の管理体制そのものの問題よりも、常時全面に出ざるをえない問題として立ちはだかっている。

大学じたいの学校法人としての経営維持問題と、高等教育機関としての研究・教育内容の水準向上の問題とは、いつも両立が困難な問題として衝突しあうような要因。

【A:追手門学院理事長】

なぜ,規模の拡大が必要なのか。

文部科学省は地方大学や小規模大学の声を受けて厳しい定員管理を求めている。

キャンパス移転で定員を増やさないかぎり,継続的な安定経営は厳しい。

【著者】

私大の場合、会計収支、財務基盤の確保の問題がどうしても先行されるがゆえに,肝心の大学の目的はそれによって左右されざるをえない面もある。

日本の大学は、私立大学に8割近くもの学生数を収容しており、しかも、高額の納付金を納めさせる実情にある。給付型奨学金は不備である。

これらの要因が輻輳する日本の大学という場は、高等教育体制としては問題だらけという実態にある。

機会均等という標語は、若者の大学進学に関しては、ほとんどなにもないに等しい。

こちらの実際的な教育社会問題と追手門学院大学(学校法人)の経営者の現実的な発想とが、はたしてただちに交叉させうるのかどうかという論点からして、そもそも問題含み。

それ以前に検討しておき解決すべき問題がありすぎる。



【A:追手門学院大学】

関西ではいわゆる関関同立を頂点に私立大学のランクがあるが、頑張っている大学とそうでない大学の差がつきはじめた。

秩序の一角が崩れ出したいまが勝負時だ。

50年で蓄えた人的資源と資金を一気に投入し、新しい教育体系を確立する。

【著者】

この経営者の気概には感心する。

だが、追手門学院の努力が事後においていかほど、その計画どおりに実現するみこみがあるかといえば,これは確信をもって判断させうる確実な材料があるわけではない。

【Q:日本経済新聞】

勝負のポイントは。

【A:追手門学院理事長】

教育内容の充実。

それには教員力の強化が重要だ。いままでの大学教員は大学は学生のためにあるという意識が乏しかった。

古い体質の教員には勇退してもらうか,意識改革をしてもらう。

ここ数年で,実務家教員の増員や准教授以下の任期制採用,さらに年俸制導入などにとり組み,教員の入れ替えも進んだ。

【著者】

アメリカでは助教授まで任期制で,准教授からが終身制。

日本の大学では個別に相違があるが、准教授だとだいたい40歳くらいまでは務めることになる。

この世代の生活を、経済収入的に継続して安定させえない大学教員職に,はたして研究・教育に専念できる条件を付与できるといえるのか?

任期制を導入している大学があるが,浅慮である。優秀な人材が大学から逃げる。

敗者復活戦的な労働市場がととのっていない日本において,大学全般がいまでは任期制を好んで導入しているが,教員側の研究条件維持を阻害する要因になっている。

大学教員のもつ研究者としての基本性格をよく考慮した待遇が制度として必要。

教授連中が反面で,それではりっぱに仕事をしつづけているのかという点もとりあげないのであれば,准教授だけ任期制を付すのは不公平・不均衡である。

【A:追手門学院理事長】

学長面接とは別に、理事長面接を全教員を対象に始めた。

職員に授業を参観してリポートを提出させている。

学生の遅刻や私語もチェックする。

学校教育法の改正前に教授会を諮問機関化した。

学長選挙をはじめ、学内には選挙はいっさいない。

教授会には理事長、学長がいつでも出席できる。

【著者】

授業運営における問題として、学生側の態度は,とりわけ非一流大学では最悪である。

ところが、これ(教員側の懸命な善導である指導態勢)に反撥する学生からのきわめて不当な申し出をとりあげては、個人攻撃の材料にするような低劣な資質の学長など管理職もいたりで、とうていまともな教育者とは思えないような反応行動を起こす非教職的な人間もいないわけではない。

【A:追手門学院理事長】

私立大学では経営と教学の分離が必要だといわれるが、それは間違い。

教学を抜きにした私学経営はありえない。理事会として積極的に教学改革を進めている。

【Q:日本経済新聞】アサーティブ入試が話題になった。

【A:追手門学院理事長】

アサーティブプログラムは、高校在学中から本学職員が高校生と個別に面談し、基礎学力の充実と大学で学ぶ目的を考えさせるとり組み。

修了者を対象に実施するのがアサーティブ入試で、選抜型から育成型入試への転換を目指している。

2014年度導入で、国の大学入試改革の先取りであり、追手門の教育改革の柱のひとつ。

記憶力中心の偏差値入試では、人間的魅力にあふれる志の高い若者は育たない。

答えがない社会のなかで生き抜いていける若者を集め、新しい教育を構築したい。

【著者】

私学だけの問題ではない教育課題が語られている。

「国の大学入試改革の先取りであり,追手門〔学院大学〕の教育改革の柱のひとつだ」という訴えがなされている。

だが、大学市場としてドメイン(ここではこの大学が入学させる対象と想定している学生層)に関しては,妥当性のない論説である。

根本から観て無理筋の議論である。

国立大学を受験する高校生がこの追手門学院大学を志望しているかどうかである。

問われるまでもなくすぐに諒解できる話題である。

まとめ

【筆者】のようなホンネをお持ちの大学人も多いかもしれない。

ここには、各大学が取り組んでいる課題が多く提示されている。

  • 独自の生き残り戦略
  • 新学部設置や定員増等の規模拡大による安定経営
  • 魅力ある教育の充実
  • ガバナンス
  • 経営維持問題と高等教育機関としての研究・教育内容の水準向上問題との両立
  • 経営と教学の分離

さて、現状のまま進めば、今後は下位大学から順番に消えていくことは当然のことであろう。

いっぽうで、わが国の大学進学率はけっして高いとはいえないという現状がある。

いま以上に、進学を希望する高校生―経済的に困窮している生徒を含めて―、そして社会人を受け入れる環境づくりが求められているのではないか。

可能なかぎり多くの大学が生き残れるように、大学への進学者を増やすことは不可能であろうか。

教育の質充実こそが、そのような存在価値のある大学になるための大前提ではあるまいか。

そのような明るい未来をイメージして、国や各大学が進んでいくことは、夢物語だと一笑されるであろうか。

けっして明るい未来ではないからこそ、自らの手でそれをすこしでも変えていくという気概が必要だと強く感じるのである。

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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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