社会学者の竹内洋氏の講演「戦後日本と大衆社会」@日本記者クラブからです。動画ですが、質疑応答での、G・L型大学についての回答が興味深いのでテキストにしてみました。
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【Q】日本経済新聞記者(?)から
大学の今後の役割について。
いまG型大学とL型大学に大学を分けたらどうか―G型は従来型の幅広い、L型は実用教育を―ということを提唱されている方がいる。「シェイクスピアより観光英語を教えろ」というような話ですね。
大学というのはこれでいいのかと思う反面、実用的な知というものが堅気を育てるものならば、観光英語から学ぶものもあるから、それはそれで大学なのかなと、ちょっと自分の中でもうまく結論というか見方が定まっていない。
このG型L型という大学の今後のあり方への提言をどうお考えになるか、お聞きしたい。
【A】竹内教授
皆さま話題になっていると思います。私はこの頃もう歳だから審議会も行かないんですが、大学問題の審議会で私が非常に感じたのは、ビジネスの代表の人はもちろん見識のある人が選ばれておりますけど、自分の大学時代を考えるんですよね。
自分の大学の時代とはもう全然今の大学は違っているんですよ。最近もう休講なんかできないことは皆さんご存知ですよね。15回―半期ですよ。半期15回で、だから通年やったら30回。
昔だったら20回もやってなかったじゃないですか。私が京大のときなんか、開講は4月20何日から始まるってそんなばっかりでしたよ。京大はとくにひどかったですけど、それでもう6月早々にもう終わってしまう。20回もやっていなかった気がするんですけどね。
(審議会のビジネス代表の委員に)一度聞いたことがあるんですが、「あなたたち、そんな全部授業に行ってました?」って聞いたら「行ってない」。行ってない人が15回とか言うのは良くないんじゃないかと私は思うんですが。
今のご質問のG型ですか、これグローバル化ですか。G型のほうは高度なことをやって、L型のほうは身近な知識と言うんだけれども、これも私はあんまり今の大学を知らないんじゃないかと思うんですよ。
よくね、大学の先生は研究ばっかりやって教育しないとか言うけど、そんな人今いません。もう研究なんかできないんですよ。
それから大学はもう進学率50何パーセントでですね、そんなシェイクスピアを偏差値の低い大学でやってるとこなんかどこもないです。手紙の書き方を教えてる―名前を言ったら皆さんがわかるような大学ですよ―授業科目で手紙の書き方の授業、履歴書の書き方。だから現実はもうそんなシェイクスピアを英語でなんて、そんなことまったくできません。
だから、ちょっと実際と違うんじゃないかと私個人は思ってます。ただ、やり方でもっと徹底してきちんと自分たちの大学はこういう方向で行くんだっていうことに一石を投じた提言、という意味では私はわかりますけど。
現実がなんか、昔の大学みたいなことを先生がしていることはないと思うんですけどね。
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教員の本音を聞くことはあまりないだけに、貴重な意見です。
ユニバーサル化時代における教育の課題。世界ランキングにおけるわが国の大学の低迷。教育の質充実をはじめとする「大学改革」の遅れ。
この発言のなかに、それらの原因の一端を明確に見出すことができます。
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