井原 徹「これまでの大学職員論を超えて」(実践女子学園 理事長/大学経営)
要約
1.職員が果たす役割の存在
- 大学職員は、自分の職業に誇りを持てているのだろうか?
- 教えない人を疎外して大学は成り立つであろうか。
- 職員は、教育が十全に遂行されるよう、「体制や環境を整備する」人々である。それは脇役業務ではあるが、必須の業務であることは間違いない。
2.米国の大学職員
- 「職員」は米国では「スタッフ」または「スタッフメンバー」
- 個人の職務を明確に言う。大学も企業も国の機関も全てにおいて「ポジション制度」で社会が構成されている。
- 「能力・成果主義」が基本になっていて、シニオリティー(年齢の上の人を尊重する)は守るが、仕事の責任・権限においては男女の差や年齢の上下をあまり感じさせない。
3.職員のプライド
- 職員は教育研究の単なる下請け業務をするためにいるのではない。教育研究を「事務という手段で推進」しているのである。
4.これまでの職員論に終焉を
- 大学という世界は教員と職員という集団で構成されているから、職員論が出てくる。
- 現実の大学業務は90%が「維持型業務」であり、「創造型・改革型業務」はせいぜい10%。
- 維持型業務にも「改善・改革」のメスを入れて、無駄なあるいは役割が半減している業務を、切り捨てるか縮小させる努力をして、そこで生み出されたマンパワーを、その大学の新たな目標の達成に注力していくことは大切なこと
5.これからの「職員」への要望
- 常に大学全体を見渡して、種々のものを融合・調整・機能充実させる「総合調整役」であることを目標とすべき
- 大学職員はUSR(University Social Responsibility 大学の社会的責任発揮)のための学内調整役になるべき
- UG(University Governance 大学の統治)において、UGの一翼を担うべく意見を堂々と発するとともに、コンプライアンスの推進者にならなければならない。
- プライドを持ち、それを担保する実力を身に着けてほしい。
感想:「目的と手段」から本気の組織づくりを
上記の要約ではあえて省略しましたが、「4.これまでの職員論に終焉を」には重要な指摘があります。
長くなりますが、すこし構成を変えて引用します。
そもそも教員でない者は職員という集団二分法がおかしい。「目的と手段」の関係で、そもそも現状を解きほぐしていかなければ、ダイナミックな動きをする大学を創ることなど不可能。つまらない職員論には終焉を告げたい。
目的と手段とは、具体的には次のようなことです。
・自分の大学の目的や目標を達成させるためには
・一体どんな仕事が必要であるか
・それはどういう能力・特技を持った人が遂行できるか
・それをどういう雇用条件で雇うか
・その人にどういう肩書を付けるか
・その人をどういう場所でどれだけ働かせるか
大学の目的・目標を達成するために、職員の職務を明確にした組織づくりを行う。まだ一部に留まっているこのような雇用は、業務がますます高度化・多様化するであろう今後、高度専門職をはじめとして広がっていくのかもしれません。
本気の組織づくりを考えねばならない時代になっているのではないでしょうか。
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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!
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