私立大学の経営改善|「私立大学等の振興に関する検討会議」から

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はじめに

私立大学等の振興に関する検討会議(第2回)「私立大学が置かれている法人運営に係る実態と今後の在り方への提言」(西井泰彦氏/私学高等教育研究所主幹)からのご紹介。

経営層向けの内容だが、将来について不安を感じている職員にこそ目を通してほしい。

議事録配布資料が公開されているが、ここでは議事録から筆者が重要だと感じたことについてまとめてみた。

それは、

  • 経営困難に至る共通の要因
  • 経営改善のために克服すべき課題
  • 取り組むべき現実的な経営課題
  • 経営手法に関する留意事項

についてである。

西井氏はこう述べておられる。

「将来的に大学を残すためには、退路を断った抜本的な方向転換と資金投資が必要」

それではご紹介しよう。

幾つかの私立学校で起きた経営上の問題事項の要因

経営困難に至った原因には幾つかの共通項がある。

1.経営困難の最大の要因は学生が少なくなること

学生が減少したとき、又は減少せざるを得ないときの方策が重要。
収入の減少分をカバーする抜本的な方策が必要であり、真剣な経営改善の課題が求められる。

2.単年度収支が悪化し、それが継続することによって、金融資産が減少

3.経常収支以外の要因

教員を主とする大学の経営陣は、設備投資や借入金などの経営資源に対しては感覚が疎い面がある。
当面の教育活動に係る予算や経常収支への関心は強くあるが、中長期的な資金計画や資金留保には抵抗を示す。
平時の単年度のバランスだけでは十分でなく、大きな設備投資や不測の事態に備える財政基盤が貧弱であれば安定的な経営が困難となる。

4.経営姿勢や経営体制の問題

厳しい経営環境に置かれている私立学校では、学校経営が民主的過ぎても、強圧的過ぎても、うまくいかない。
学内紛争や不祥事が発生すると、学園の評判が下落し、回復が困難となる。



私立大学の経営改善を進める上で克服すべき課題

1.法人と大学を全体的に方向付けることが経営課題

2.経営改善に取り組むべき状態をどう認識し、危機意識を共有するか

早めに対策を実行することが必要。
反対を恐れずにあえて踏み込む経営者は多くはない。

3.経営判断と経営責任についての問題

危機の時代における経営判断の誤りや遅れは私立学校の存続と発展を大きく左右する。
適切な経営判断を行い、それをチェックすることは理事会自身の責務であり、外部からの責任追及は慎重でなければならない。

私立大学が取り組むべき現実的な経営課題

  • グランドデザインなどの総花的で抽象的な目標でなく、短期的又は中長期的に実行する具体的な課題を設定する必要がある。
  • 回避されがちな経営課題、例えば本給や賞与、手当などの見直しが重要。私立大学の教職員の給与水準の二極化が進行している。大手大学の教職員の給与水準はこれまでの定員超過によって生み出された結果。
  • 私立大学で抵抗されがちな経営課題に、学部・学科の改組や新設がある。既設の学部メンバーで構成されている大学機関においては、自分たちの学部・学科の改編、整理に関することには強く抵抗する。定員削減や募集停止、教員の異動、削減などに賛成する教授会はまずない。大学が時代と社会の変化に応じて学部組織を整理改編することは重要な課題。そういう厳しい取組を進めることが今後の経営上の課題になってくる。
  • 不可欠な経営課題が大学の施設設備という「箱物」の更新と充実。
    私立大学の施設は学校教育法の設置者負担主義によって、自己負担が原則。現実的には、今まで整備してきた施設設備の更新財源も乏しくなっている。帰属収入の4年分ぐらいの有形固定資産を数年から50年程度の期間で更新しなければならない。その原資を収支活動で生み出さなければならないが、この財源が近年は著しく少なくなっている。
    これらの更新財源を生み出すことが私学の大きな財政課題。

経営改善を進めるための経営手法に関する留意事項

  • 教職員全員に対するメールやメッセージの配信が効果的。
  • 大学の将来を担うミドル層へのアピール。
    彼らの当事者意識を喚起し、前向きな方向に変革する意欲を取り上げていくことが重要。影響を最も受ける40才台から50才台のミドル層の関心を高め,有効に活用することが望まれる。

そして同氏は、最後に次のように述べておられる。

私立学校の特色ある建学の理念と優れた伝統を次の時代に発展的に引き継ぐことは私学のマネジメントの大きな課題。

経営者だけでなく教職員も含めてベクトルを合わせていくことが課題。

大学や法人の内部の対立を最小化し,私立学校の存在意義を発揮させる公正な姿勢と指導力が理事会と経営責任者に期待される。

まとめ

「人件費に手をつけるのは最終手段ではないか」という労組の質問に、「人件費は最終手段ではない。優先順位がいちばん高いのは住民サービスだ。そのためにいっしょに考えようということだ」と答えた某市の首長がいたことを思い出す。

それに倣っていえば、「優先順位がいちばん高いのは学生サービスだ」ということになる。

人件費の削減について軽々しく口にすべきではないし、その資格も筆者にはない。

だが、「高給だが、収支が悪化している組織」というのは、それ自体が矛盾した存在ではないか。

そんなことを感じたのだった。

 

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大学職員ブロガーです。テーマは「大学職員のインプットとアウトプット」です。【経歴】 大学卒業後、関西にある私立大学へ奉職し、41年間勤めました。 退職後も、大学職員の自己啓発や勉強のお手伝いをし、未来に希望のもてる大学職員を増やすことができればいいなと考えています。【趣味】読書・音楽(主にジャズとクラシック)・旅 【信条】 健康第一であと10年!

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