大学は成人学生を取り込むことができるのか?
ここでは、「国内大学での新たな学生獲得の余地」として成人学生を挙げる論稿をご紹介する。
そして、シニア層の取り込み例として、立教大学の立教セカンドステージ大学をご紹介し、最後に成人学生受け入れの可能性について考えてみた。
それではご紹介しよう。
対象マーケットの転換―ダイバーシティの実現
こちらの記事では、「国内大学での新たな学生獲得の余地」として、専業主婦層、ニート/フリーターを筆頭格として、高齢者もその候補として挙げている。
いっぽう国外では、BRICS、PINEs(フィリピン、インドネシア、ナイジェリア、エチオピア)、その他の東南アジア諸国からの留学生受け入れと、国内での就業先の確保を挙げている。
そして最後に、
「2030年の国内大学にイメージすることは、国籍や世代を問わない多様な学生が集積することであり、その共通項は各大学の提供価値に対する共鳴である」
とし、
「この実現無くして国内大学の再興は成し得ない」
と結んでいる。
立教大学・立教セカンドステージ大学
設立の趣旨・目的
同大学ウェブサイトには次のように記されている。
立教セカンドステージ大学は、50歳以上のシニアのために、人文学的教養の修得を基礎とし、「学び直し」と「再チャレンジ」のサポートを目的とした新たな学びの場です。
立教建学の精神に基づくリベラルアーツ(教養教育)の重視と、学外からも高い評価を得ている全学共通カリキュラムや先駆的な社会人大学院で培った経験を踏まえ、シニアの人たちがセカンドステージの生き方を自らデザインする、というコンセプトが設計の原点となっています。
また、セカンドステージ大学は、単に市民に大学を開放するものではありません。シニアの人たちが集い、人と人のネットワーク、地域や社会とのネットワークを形成し、仕事や多様な社会参加の担い手として、セカンドステージに踏み出すための新しいキャンパスの創造と位置付けています。
(注)立教セカンドステージ大学は文部科学省認可の大学ではありませんが、本課程の修了者は文部科学省が定めた学校教育法105条の規定に基づく「履修証明書」が交付されます。
修了生の進路
これも同サイトによると以下のようである。
- 専攻科への進学
専攻科の定員は30名、修業年限は1年。
- 科目聴講生制度
立教セカンドステージ大学を一度修了した後も、この制度を利用すれば、もう一度大学に戻ってきて、立教セカンドステージ大学のカリキュラムを受講することができる。
- 社会貢献活動サポートセンター
セカンドステージに役立つ調査・研究活動や社会的に意義のある活動を自主的に行っている受講生および修了生の団体を側面から支援するために大学が設立したしくみ。
現在約10団体が社会貢献活動サポートセンターに登録され、受講生、修了生が一緒になって社会貢献を目指して自主的な活動を展開している。
そのほか、同窓会や、研究会、同好会があり、活発な活動が行われているようだ。
まとめ
ここで学ぶ学生は、聴講生・科目等履修生(パートタイム学生)とフルタイム学生のちょうど中間の存在と位置づけられるのではないだろうか。
単なるヒマつぶしではない、向学心のある、本気で学ぶシニアには最適な場所だろう。
筆者が注目したのは「修了後の進路」である。
人生100年時代に、50代や60代で完全引退することは考えられない。
年齢に応じた、仕事や社会貢献活動を続けたいと思っている人は想像以上に多いにちがいないからである。
同大学では、社会貢献活動サポートセンターがあり、「現在約10団体が社会貢献活動サポートセンターに登録され、受講生、修了生が一緒になって社会貢献を目指して自主的な活動を展開しています」とある。
修了生の「その後」をもっと知りたいものである。
ところで、上記の記事が主張している学生とは、成人のフルタイム学生であろう。
いま空前のセミナーブームだという。
オフィス街のセミナールームで学ぶ人たちを見ることも最近はとみに多いから、おそらく事実なのだろう。
それほど社会人が学ぶことに熱心な理由を、あらためてここで述べる必要はあるまい。
そういった人たち、シニア、そして主婦が、大学の学部生として入学してくれるか?
そこには、さまざまなハードルが立ちはだかっているとしか言いようがない。
これが、誠にお粗末な筆者の結論である。
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